でもまだまだ焼きたいものがあって、何を作るか悩むところなんです
が、メニューのなかからフランスパンらしきものが抜けているのに気づ
いた方もおられるかもしれません。
田舎パンってのがひょっとしたらまあ近いかなとも思えるんですが、基
本の作り方はアメリカの本を参考にしているし、いわゆるフランスパン
という感じはあまりない。他ハード系はオリーブオイルが入ったイタリ
ヤのチャバッタ、フォカッチャ、それからドイツのライ麦パンと来るの
ですが、実はまだ定番中の定番フランスパンといえばこれという「バ
ゲット」がないんです。
なんで今まで作らなかったのかというと、たんに苦手、というのもある
のですが、このパンほど焼きたてを前提にして作られているものはない
と思えるからです。パリッとしたクラスト、もっちりとしたクラム、軽
い酸味、小麦の香り、香ばしさ。焼きたてを買って、帰りながら食べ
て、気がつくと一本全て食べている。おいしいバゲットに出会ったとき
はだいたいこんな感じでしょうか。焼きたて、というかつまり焼き終え
てから4,5時間以内に食べきることが出来たときのみ、バゲットの真
の姿に接することができるのです。
もちろんその日の夕方でも次の日の昼でもおいしいことはおいしいので
すが、クラストのパリッとクラムのもちっの対比はだんだんと薄れてき
ており、言うなれば冷めたアイスクリームの天ぷら、ほどではないと思
いますが、できあがったばかりの時のあの心が躍るような感動を得るこ
とはなくなってしまうわけです。トーストするならばそれはただの田舎
パンになってしまうのです。それでもまあそれはそれでおいしいんです
が。
ということは、うちでバゲットを焼いて、9時に焼き上がるとしましょ
う。そうすると、その日のお昼ごはんにまるまるバゲットをかじりたお
す。これができなければ、このパンの持つ最大の魅力を味わうことはで
きない...夜ご飯では遅いのです。まだゆっくりパンを食べれる場所
もないし、市内からも30分以上はかかるし、どう考えても「田舎パ
ン」が向いている「田舎」にあるホトトギスで、「都会パン」とも言え
る新鮮さが命のバゲットを作る意味があるのかどうか...
ちなみにフランスでは、朝早くからバゲットを焼きだし、夜の閉店まで
延々と焼き続け、何時にいっても常に焼きたてが買えるそうです。朝ご
飯も昼ご飯も夜ご飯にもバゲットを食べることができます。まさに食文
化が先にあってこそ生まれたパンなのでしょうが、いかに米消費が少な
くなってきたと言われても未だに「主食」と呼ばれるほど白いご飯を食
べる日本において(多くの文化においては主食という概念はない)、こ
のような頻度でパンを焼いていくことはほぼ無理であるということは、
ホテルなどの特殊な環境をのぞく町のパン屋、村のパン屋にとっては自
明でしょう。
前置きが長くなってしまいましたが、実は今日バゲットの試作をしてみ
たところで。
これがまあかなり衝撃の出来でして。
完成にはまだまだかなというところですが、ぼちぼち焼いていこうかな
と思ってるところなんですが。
それにしてもお昼がパンだけだったりすると、なんと晩ご飯の白米がう
まいことか。
タイカレー、食べ過ぎた...